私が夫とブータンに行ったのは、もう9年も前の話になります。
そのときは日本からではなく、ネパールの旅行代理店から
手配してブータンに入りました。
そのため、私たちに付いたガイドさんは
日本語は話せない人だったので、英語だけで会話していました。
といっても、私は英語もダメなので、
もっぱら夫からの通訳と手振り身振りと
テレパシー(?)で、その通訳の人と会話していたのです。
そのガイドさんは、ブータンに住む若い男性で
とても親切に、いろいろ便宜を図ってくれた上に
旅行中、ずっとブータンでの暮らしを
フレンドリーに話してくれたので
とても有意義な旅になったことを記憶しています。
そして、互いの会話がテレパシー(?)とも書いたのは、
以心伝心で、こちらの言いたいことを
言葉がわからなくても、理解してくれる人だったのです。
さて、その時、私たちがブータンに行った目的は
約8世紀頃にチベットから仏教を伝えたという
パドマサンバヴァという聖者が
虎に乗って空を飛んでやってきてひと晩で建てたという
伝説が残る、崖っぷちにそびえ立つタクツァン僧院や
パドマサンバヴァが瞑想をした場所などを
見に行くことでした。
タクツァン僧院は、ほんとに残念なことなのですが
私たちが行った翌年に火事で焼失してしまったのですが
私たちは運良くお寺の中にも入れてもらうことができ
そこで瞑想もさせていただくことができました。
その他にも、パドマサンバヴァが瞑想を行われたという場所は
パドマサンバヴァが座ってられた石が
座っていた形そのものに人型にくぼんでいて
それを大切に奉っているお寺もあったりと
ほんとにブータンには不思議な話がたくさんあり
それをガイドさんも含めて、そこにいる人たちは
何の疑念も持つことなく、ほんとにあった話だということで
普通に話をしてくれたことを覚えてい ます。
その中には、私たちをある川まで連れて行き
その川の底でパドマサンバヴァが残した埋蔵教を
その昔、ここでみつけたという話だとか、
日本だったら、笑われてしまうような話を
ほんとに真剣に、そしてリアルに話をしてくれて、
私たちも、真剣にそれらの話に聞き入っていました。
そして、もうひとつ、パドマサンバヴァが
チベットにまつわる不思議な預言を残していた話があり
それが、とても興味深いお話だったのです。
パドマサンバヴァという聖者の名前は
日本ではどれくらい知名度があるのか分からないのですが
ブータンでは、とても有名な聖者さまで
私も大好きな聖者のひとりです。
パドマサンバヴァという名前は日本語では
蓮華生という意味を持ちます。
とても不思議な力を持ってられて、
たくさんの予言も残されたそうです。
そして、その中にチベットにまつわる予言もあったそうなのです。
その予言は、「チベットの海が南へながれる」
というような言葉で残されているのだそうです。
そして、海というのは、不思議なことに、
ダライラマ法王の本名と一致するのだそうです。
そして、この言葉は、ダライラマ法王が
インドへ亡命せざるを得なかった状況を
表していたのではないかというお話でした。
そして、パドマサンバヴァの預言には
必ず悲劇的な結末を迎えないための回避策も
一緒に残されているそうなのです。
チベットの海が南へながされないための回避策としては
とても大きな仏塔をチベットに建てることができていれば
この預言は成就しないということだったそうなのです。
しかし、チベットには大きく分けると四つの宗派があり
その仏塔を建てるためには、すべての宗派が
力を合わせなければいけないくらいに、
たいへんなことだったということでした。
しかし、当時は、その宗派間の一部で激しい対立があり、
とても力を合わせることができる状況ではなかったのだと
この話をしてくれた人はおっしゃっていました。
そのために、仏塔は建てることができず
パドマサンバヴァの予言どおりに、チベットは中国によって
侵略されてしまったということなのだそうです。
私は、預言とか運命という言葉は、ある意味、信じています。
ここで、ある意味と書いたのは、パドマサンバヴァの
予言でもわかるように、それは絶対的なものではなく
必ずその回避策というものは残されているのだと感じるからです。
ただ、それは、とても徳の高いはずのチベットのお坊様たちでさえ
なかなか実現できないくらいに難しいものなのだなと
このお話を聞いて実感したものでした。
でも、希望を捨てる必要はないのですよね。
パドマサンバヴァが伝説として残した多くの奇跡のように
信じて希望を持ち続ければ、いつかまた、
たくさんの奇跡が誰の身にも起こるかもしれませんものね。
それにしても、ブータンという国は本当に不思議な国でした。
だって、こんなお話が日常的に話されてるのですから。
他にもブータンでの不思議なお話はたくさんあるのですが
またいつか、気が向いたら書いてみたいと思います。
2005.12.11