今回は、とうとつな書き出しになってしまうのですが。。。
せーりー君がやってくる半年ほど前、
ひとりの友人が自殺をしました。
私より、5つか6つくらい年下の、その女性と最後に会ったのは、
自殺をする1年半ほど前のことでした。
仮にその人の名前を「亜由美」としておきます。
亜由美と一緒に仕事をしていた頃は、
上司と部下という関係のときもありました。
彼女は、頼んだことは、いつでも明るい返事で答えてくれるだけでなく、
どんなことも、一生懸命にこなしてくれていました。
亜由美が仕事場を変えて、近くの会社に転勤してからも、
なぜか休み時間などに、私の仕事場までグチを言いに走って来ていました。
「聞いて、聞いて~。ひどいの、ひどいの~。」
いつも、その言葉から始まる彼女の話を
私は毎日のように聞かされていたのですが、
私の方から、何を話したのかは、あまり覚えていないので、
亜由美の話を、それほど気構えて聞いていなかったのだと思います。
でも、それでも最後には、いつも、
「うん、わかった。そう考えることにする。」
と言って帰って行ったので、彼女の気晴らしにはなっていたようです。
会社に来れないときは、私が休んでいる自宅にまで押しかけてきたので、
ほとんど毎日のように、話を聞いていたという感じでした。
他にも、彼女との変なエピソードはいろいろあるのですが、
ある時は、こんなこともありました。
仕事で、ある大きなイベントを手伝っていたとき、
私は二日ほど寝ていなかったので、
少し、その場を抜け出して、人目のつかないところで仮眠を取ることにしました。
目が覚めると、なぜか横に亜由美が一緒になって寝ています。
「なんで、そこにいるの???」
私がそう訪ねると、
「えへへへ」
「なんで起こさないで、一緒に寝てるの???」
と聞いても、
「えへへへ」
とにかく、いつも素直で、明るい子でした。。。
そんな彼女と会わなくなったのは、
私が結婚のため退職をして、そのままアジア方面を
一年ほど回っていたからでした。
帰国してから、彼女に連絡をしようとは思ったものの、
もう少し、こちらの状態が落ち着いてからにしようと考えていた矢先に、
亜由美が屋上から飛び降りたという話を聞いたのでした。
遺書等は残されていなかったらしいので、
本当に衝動的に飛び降りてしまったのかもしれません。
もう少し早く連絡をして、
「聞いて、聞いて~。ひどいの、ひどいの~」
という話を聞くことが出来れていれば、
もしかしたら彼女は飛び降りなかったかも、と、何度思ったかしれません。
そんなことがあってから、
夢の中に、何度となく、亜由美が出てくるようになりました。
いつもは明るかったはずの亜由美ですが、
夢の中では、いつも暗く沈んでいました。
なにも話すことなく、気がつくと、私の後ろに立っているという場面が
最初の頃は多かったように思います。
私の方から亜由美に会いに行くこともあったのですが、
そんなときは、なぜか、亜由美のいるところと、私のいるところの間に
見えない透明なガラスの壁のようなものがあって、
彼女に話しかけられないという夢も、何度か見ました。
その頃、私の環境が結婚退職ということによって急変したということもあって、
会えなくなった誰々はどうしているだろうと気になって考えると、
その人の夢を見て、その人の状況が分かったりするということが、よくありました。
そして、起きてから、何らかの形で確認をしてみると、
けっこう正確に、夢で見た状況が当たってたりしていたのでした。
そんな矢先に見続けていた亜由美の夢でした。
そして、現実の世界での時間が経つにつれ、
夢の中に出てくる亜由美は、どんどん暗くなっていきました。
顔にも、どんどん湿疹のようなものが出来てきて、
それによって、今の亜由美のエネルギー状態は最悪なんだと
感じていたりもしていたのでした。
ある時は、亜由美が馬になってしまったという夢を見たこともありました。
でも、それは、馬になっても生まれてすぐか、もしかしたら生まれる前に、
すぐに死んでしまったというような夢でした。
そんなとき、ある時から急に、夢の中の亜由美が、
昔、私が知っていた亜由美のときのように明るくなったのです。
顔に出ていた湿疹もきれいに消えて、とてもはつらつとしてきました。
「どうしたの?大丈夫?」と、いつも夢の中では、こう声をかけていたのですが、
それまでの夢では、いくら声をかけても、黙って下を向いてしまうだけだったのに、
ある時から、
「私、また、もとの生活に戻ることが出来たの♪」
と、嬉しそうに返してくるようになったのです。
「そうなの!? それは、よかったね~。今度こそ、幸せになるんだよ!!」
と、私の方から声をかけたまではよかったのですが、
それからの夢は、少しずつ状況がおかしなことに気づいてきました。
夢の中の亜由美は、ある時は、大きな靴下を抱えて、
ばったんばったんと転がったりして、じゃれているのです。
「これって、どっかで見た光景のような気がする。。。」
と、考えて見ていると、亜由美はだんだんと
白エプロンのキジトラの子ネコの姿になって、その子ネコが
靴下を抱えて、ばったんばったんとじゃれている姿になってくるのです。
そして、それは現実の世界でも、
新しく家族になった、その子ネコがやっていたことでした。
そんな感じの夢を何度も見ているうちに、
「もしかしたら、もしかして。。。」という気持ちになってきた頃、
夫殿も、そんなことを示唆するような夢をみるようになってきました。
そして、「あぁ、これは、間違いないのかも。。。」
と思うようになってきたのでした。
今までの経験からしても、何度も見る夢というのは、
なにかの大事な示唆ということが、ほとんどなのです。
そうなんです。
私のこのヴィジョンが正しければ、亜由美は、今度はネコとなって、
「聞いて、聞いて~。ひどいの、ひどいの~」
と、言いに来たのかもしれないのでした。
確かに、そう思って新しく家族となった子ネコを観察していると、
調子のいいところとか、やたら素直なところとか、
何かやるときは一生懸命なところとか、等々、
共通事項がたくさん出てくるのでした。
そんなことを、私たち夫婦だけが確信を持って感じるようになってから、
白エプロンのキジトラの子ネコに名前をつけることにしました。
再会できたことは、嬉しいといえば嬉しいし、
今度の姿の方が、ネコ好きの私にとっては、
前よりも、かわいいと言えば、かわいいのですが、
どこか不憫な気がしてしまうことも、否定できませんでした。
それでつけた名前が「せーりー」でした。
セーリーというのは、南伝仏教のひとつのお話に出てくる
ある国の王様の名前です。
生きているうちに、仏陀に対して、出来る限りの布施功徳を積んだことによって、
次の生は天界に生まれて、セーリー天使になったというお話があるのです。
ネコのせーりー君は、あくまでも、その時点ではネコなので、
お布施などは、出来ようがないのですが、
できれば、回りの人や動物に、たくさんの癒しを与えて、
それによって、次の生こそ、天界に生まれて天使になって欲しいという
願いを込めて、つけた名前でした。
そんなことが縁となって、今度は家族として一緒に暮らすことになったのですが、
せーりー君は、ネコとしても、
楽しいエピソードを、いろいろ残してくれたのでした。
<< その1 出会い ※ その3 白いネコのお話 前編 >>