その3 白いネコのお話 前編

 

今回は、せーりー君が子供のときに、数ヶ月だけ一緒に暮らした、
ペルシャネコの女の子のお話をしたいと思います。

せーりー君が家族として一緒に暮らすようになってから、
しばらくは、せーりー君は、完全家ネコの一人っ子として生活していました。

うちに来たときは、まだ、生後40日も経っていなくて、
後になると信じられないことのようなのですが、
せーりー君は、私の手のひらにすっぽり入ってしまう大きさでした。
(大きくなってからの最高体重は7.4㎏でしたが。。。)

まだ、そんな感じだったので、自由に走り回るのも
やっとの感じではあったのですが、
それでも、やんちゃで、そのくせ、ひとりの留守番は、とっても寂しそうでした。
そのため、お友達がもうひとり必要かなと考えました。

外に行けば、兄弟たちがいるので、外で遊ばせるという手もあったのですが、
これからは、ずっと私たちと一生、家族として暮らすことになります。
その時住んでいたのは、賃貸だったので、そのままそこで
一生暮らすということはあり得ないことでした。
次に引っ越した先で、外に出られない環境だったりする可能性も高く、
その時に苦労するよりも、子供のときから完全家ネコとして育てようと思っていました。
だから、外にいる兄弟と遊ばせるわけにはいかないし、
だからといって、男の子をもう一匹引き取るというのも、ちょっとためらわれました。
というのは、男の子のネコ同士は、子供のときは大変仲が良くても、
2年とか3年とかたってくると、縄張り争いをするようになる可能性が高いということなのです。
しかも、セーリーたちのお父さんは、この辺のボスネコなので、
今は人が良い、ネコが良い子達であっても、この先、どうなるかは全く未知の世界です。
それに、今の時点でも、彼らはとっても元気がいいので、
二匹以上、家の中に入れると、家が壊れてしまうかも、なんて思うくらいでした。^^;

そういった理由で、同じ年くらいのおとなしめの女の子がいたらいいのにと思っていたところ、
その近所だけに配られる無料の新聞に、ペルシャの子猫を3万円で譲ります
という広告を見つけました。
生き物をお金で買うなんて、という意見もあるかとは思いますが、
この時点で、同じ年くらいの女の子を近所で探すのは、ちょっと難しかったのも事実です。

さっそく電話をして行ってみると、そこは、二つほど隣の駅のブリーダーさんでした。
自宅でペルシャ猫を10頭近く飼っている、四条さん(仮名)という方です。

実際にお話を聞いてみると、四条さんはブリーダーで商売をするというよりも、
ペルシャネコのショーのチャンピオンネコを、自分で育てるのを趣味としている人のようでした。
チャンピオンになれるようなネコは、なかなか譲って貰うことが難しく、
譲って貰えたとしても、何百万というお値段がついてしまことも珍しくないそうで、
なら自分で、そういう子を産ませようということで、ブリーダーをやっているそうなのです。
なので、そこにいる子達は、血統書付きといっても、
代々チャンピオンという肩書きのついた、さらに身分の高いご貴族さまたちのようでした。

ペルシャという種類が、元々がおっとりしたネコのためもあるのか、
動きが優雅で、10頭近くいても、静かな雰囲気でした。
せーりー君の実家も、ネコが10匹近くいるのですが、
そちらは、やっぱり庶民という感じで、なにか雰囲気が全然違います。

それにしても、その割には3万円というのは破格に安い、というか、
血統書を出すだけでも数千円かかり、すでにワクチンも打っていた状態だったので、
ほとんど実費だけのお値段という感じです。
それに対しては四条さんは、チャンピオンになれるような子は、ずっと手元で育てるけど、
そうでない子は、生まれて少し経てば分かるので、
情が移る前に手放してしまいたいから、そういうお値段なのだと話されていました。

案内された部屋には、生後50~60日くらいの子猫が6匹くらいいました。
そこには、元気にじゃれ合っている子や、寝ている子などいろいろでした。
その中で、一匹だけ、私の目を引いた子がいたのです。
その子を初めて見たとき、一瞬だけでしたが、
その子の身体から、きれいな光が出ているのがハッキリと見えてしまったのです。
ネコで、そういうことってあり得るんだろうかと、ちょっと不思議に感じていると、
もうひとつ、とても驚くことがあったのです。

血統書を作るときには、当然のことながら、名前が必要です。
四条さんは、自分で育てる子の名前は、自分でつけて
血統書にも、その名前を書いてもらうのですが、
そうでない子は、名前をつけると情が出てしまうといけないということで、
協会の方で、適当に名前を書いてもらっていました。

きれいな光を感じたその子は、ショーには出せない子ということで、
協会でつけた名前が血統書に記されていたわけですが、
その名前が「サリー」でした。

サリーという名前自体は、私は好きでも嫌いでもないのですが、
せーりー君の名前を考えているときに、頭の中で、何度も何度も
「サリー」という名前が繰り返し出てきたのでした。
せーりー君にサリーという名前をつけるべきなのかと、
その時は一瞬思ったのですが、サリーというのは、どう考えても女の子の名前です。
頭の中にこだまするその名前が、最後にはうるさいなぁ、なんて思いながら、
うる覚えだった物語の書いてある本をひもといて、せーりー君の名前をつけたのでした。

そういうことが背景にあったので、初めて見たときに、
きれいなオーラを発していると見えてしまったその子の名前が、
ずっと、頭の中で繰り返し出てきた名前だということに、驚いてしまいました。

そして、四条さんに電話をしたときに、私は
「真っ白でおとなしめの女の子、いますか?」と聞いたのですが、
「そのまんまの子がいますよ♪」と快く答えてくれたのですが、
そのまんまの子というのが、そのサリーちゃんでした。

サリーちゃんは、顎が少しずれているらしく、そのために
ショーに出すには対象外の子ということでした。
顎がずれていると聞くと、障害者?なんて思ってしまうくらいですが、
見た目では、全然分かりません。
おそらくは、歯並びが悪いだとか、上顎とか下あごがちょっと出っ張っているとか、
そんな程度のことだったと思います。

サリーちゃんは、性格的に、同じ兄弟にも、人にもなじめず、
いつもひとりでポツンと寝てるのだそうです。
でも、私たちが行ったときは、私がサリーちゃんに一目惚れをしたように、
サリーちゃんも私たちを気に入ってくれたみたいで、
他の子よりも、むしろ積極的に、私たちにじゃれ始めました。
それを見た四条さんは、「あら~~♪♪♪」という感じで大変喜んでくれて、
「誰にもなじまなかったんですよ、この子。人に懐かないから、
ショーに出せないのに、ずっと残っちゃうかもしれないなんて思ってたんだけど、
こんなに自分から遊ぶなんて♪」と、とっても喜んでくれていました。

サリーちゃんは、見た目では分からない程度の顎がずれているという他は、
毛並みとかは、さすがにチャンピオンのDNAと感じるほどに、
真っ白でツヤツヤで本当にきれいでした。
このときは、本当に、この子の顎がずれてて良かった、と思ってしまったものです。
でなかったら、四条さんの気分次第ですけど、
どんなお値段を提示したとしても、うちに来ることは、まずなかったわけですから。
もっとも、そんなお値段だったりしたら、はなっからあきらめてしまいますけども。。。

そんなことで、誰もが喜ぶ形で交渉が成立して、
新しい家族と一緒に、せーりー君の待つ家へと帰りました。

 

 

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