白昼夢

 

それは、痛いほどの強い陽射しが射していた昼下がりのこと、
私はいつもの坂道を、ボーッと一人で歩いていました。
すると、見慣れた日常の景色は確かに目の前にあるのですが、
それとは別に、頭のはるか上の方に
私の別の意識が宇宙空間のようなところにいるのです。
そして、そこから、
「もうすぐですよ、お母さん。」
と、とても優しい声が聞こえてくるのです。
そして、その声と同時に、
おもわず涙があふれ出そうなくらいの
優しい波動の中に、私は包み込まれたのです。

その声の主は、私が千年ほど前に
チベットに男として生まれていたとき息子と呼び、
私を父と呼んでくれていたその人だと、すぐにわかりました。
その人は、その生で激しい瞑想修行を行い、
その結果、もう形のある世界には生まれ変わる必要のない魂となって
その生を終えたのでした。

その生では、私は男だったので父と呼ばれていたのですが、
今生は女性として生まれているので、
お母さんと呼んでくれたようでした。

私は、その人が、また私の近くに生まれてくれたらいいのにと、
そんなことを時折、漠然と考えていたのですが、
その人の意識とつながった瞬間に、
私は、その人に、もう一度、ただ会いたかっただけなのだと、
そんなことが理解できたのです。

あれから、その人の意識と再びつながることはないのですが、
でも、あの白昼夢のような経験を思い出すと、
私たちは、私たち自身が感じようと感じまいと、
いつも、目には見えない、いろんな存在たちに守られ、

そして、包まれて生きているのだと、
そんなことが思えるのでした。

 

2007.6.22.