その11 存在すること


その夜、眠りにつくときは、今なら、せーりー君がどこに転生したか、
きっと夢で見ることが出来るに違いないと、なぜか、妙な確信を持って眠りに入りました。

でも、夜中に一度、目が覚めたときに見た夢は、
確かに、とても明るく光が差していて、リアルな夢だったのですが、
その世界にせーりー君が行ったとは思えない場所だったのです。
なんというか、ちょっと良すぎる世界で、それは想定外だったというか。。。
そのため、「こんな大切なときに、私ったら夢の世界で遊んでしまった。。。」
と、落ち込み、深く反省をして、もう一度、眠って、夢を見直すことにしました。
今度こそ、しっかりとせーりー君の転生先の世界の夢を見るぞ!と、強く決意をして。。。

次に目が覚めたときも、まだ夜中でした。
その時も、やはり、とてもリアルな夢を見て目が覚めたのですが。。。
なぜか、その時の夢も、さっきと、まったく同じ場所に行ったのでした。
今度は、場所だけでなく、しっかりせーりー君と認識できる人も出てきて、
それ以外にも、何人かが集まって、まるでせーりー君の歓迎会をしているように見えた夢でした。
そのために、目が覚めたときは、またまた、一度ならず二度までも、
こんな大切なときに夢で遊んでしまったと、さらに深く落ち込み、今度は、守護者の方に、
「今度こそ、せーりー君が転生した先の場所を見せてください。」
と切に切にお願いをして、三度目の眠りにつきました。

その次もまた、リアルな夢を見て目が覚めました。
今度の夢も、状況こそは違っていたけれども、やはり、さっきの夢と同じ世界に行ったのでした。
今度は、まったく別の人が、「新人が来たから、しっかり様子を見てあげないとな」
とか言っているような夢だったのです。
三度目に目が覚めたときは、もう三回も、せーりー君の行った先の夢を見ることができなかったと、
私は相当に落ち込みました。
でも、そのとき、もしかしたら、この三つの夢は、よくよく思い起こせば関連性があるのでは。。。
と気づき、そこにせーりー君が行ったのだと考えたら、意味がちゃんと繋がってくるような。。。
と、ようやく、そういう思いに至ると、
「あぁ、そうだったんだぁ。」と、今度は深く納得ができてしまったのでした。

そして、信じられないようなことは、さらに続きました。

外が明るくなってきたので、今度は本格的に起きて、行動を始めようとしました。
そして、祭壇の前を、ふと通り過ぎようとすると、
「僕、元気になたっよ~~~♪♪」と、なぜか、せーりー君と分かる声が
ハッキリと聞こえてきてしまったのです。
私は、「え”っ」と耳を疑って、そこに立ち止まると、
「僕、とっても自由になったんだ~~~♪♪」
と、また、さらに声が聞こえてくるのです。

ここで、思いきってカミングアウトしてしまうと、
今までも、守護者の方の声とかは、聞こえていたりしていたのです。
でも、残念なことに、ネコたちの声とかは、ニャーとしか聞くことができず、
彼らが何か思いを伝えようと鳴き続けても、最低限のことしか伝わってこないなぁと、
ときおり、お互いにジレンマを感じていたりしていたのでした。
それが、せーりー君がネコの肉体を離れ、別の世界に行ったとたんに、
こんな風に声が聞こえるなんて、と、そうとうに自分の耳と頭を疑ってしまいました。

でも、そんな私の心配をよそに、せーりー君の話は、次から次へと止むことがありません。
「僕ね、僕ね」と、今いるところの状況やら、なにやらと、とにかく話し続けています。
そういえば、亜由美のときは、そうとうにおしゃべりだったなぁと思いだしました。
でも、ネコのセーリーのときは、おしゃべりをしたくても、細かいところは何も伝わらなくて、
それで時々ヒステリーを起こして、ネコパンチが飛んできたのかも、という思いが出てきたのです。

その話のなかで、おもしろかったのは、声が聞こえたばかりのときは、
まだ新しい名前がないと言っていたのですが、半日もすると、名前がついたよー、と言ってきました。
その名前を教えてもらうと、「この名前の言葉はサンスクリット語にあるから、探して、探して!」
と、しきりに聞こえてくるので、それから必死になって、その言葉を探してみると、
本当に、その言葉が、ちゃんとあったのです。
うちにあるサンスクリット語の辞書は、とても薄っぺらいものなので、見つかるだろうかと
心配だったのですが、その辞書以外にもあちこち探してみると、ようやく見つけることができました。
その言葉の意味は、本当にステキなものだったのですが、ここでは秘密です。(笑)

もっとも、これらのことが本当のことかどうかなんて、誰にも分からないことかと思います。
実際のところ、私自身も、よく分かりません。
でも、こんなことが本当にあるのだと思うことができれば、それは真実だということになるし、
それが嘘っぱちだと考えれば、その人にとっては、そんな世界は存在しないことになると思います。

ただ、その声が聞こえてくるまでは、何か、心の中にすっぽりと穴が空いてしまったような
寂しさを感じていたのですが、その声を感じることができているときは、
心だけではなく、とても深いところからのなにかが、喜び、歓喜している状態になるのです。

この世界は、刻々と変化しています。
どんなことも、たかが1秒前でさえ同じものはないはずなのです。
ときには、その変化は、楽しさを感じさせてくれることもありますが、
場合によっては、その変化が、大きな苦しみを、私たちにもたらすことになっています。

その中で、私たちの本質である、魂よりも純粋な真我だけは、ただ、そこに存在しています。
私たちが、この世界で、楽しんだり、悲しんだり、苦しんだりの様々な経験は、
すべて、私たちの本質である真我というものが、本当は完璧なものだということを知るために、
そして、その私たち自身である真我に戻るために、私たちは、ここに存在しているのだと思います。
いきなり、その真我の状態を感じることは難しくても、
私たちは、目に見える形あるものだけ、それは物質だったり、お金だったり、肉体だったりしますが、
それだけに心が捕らわれるのではなく、もっと、本質的なものに近いものを感じたときに、
私たちは、その苦しみから解放され、喜びに心が満ちてくるのだと思うのです。
なぜなら、私たちの本質こそが、絶対的な、なにものにも崩されることのない、
自由と喜びと幸福と愛そのものなのですから。

そして、そんなことがいろいろとあったなかで、
とにかく、せーりー君の古い肉体は、もう必要がないということだけは強く実感できたので、
次の日に、ペット霊園で火葬を行ってきました。

その日は、台風が過ぎ去った直後で、風はまだまだ強かったのですが、
空は晴れ渡って、とても気持ちの良い日でした。
火葬場の外に出て、せーりー君の肉体が燃える白い煙が風に飛ばされ、
空に昇っていく様子を、しばらく見ていました。

家に帰ると、そこには、せーりー君を除いたら、いつもと同じ景色があるはずだったのです。
でも、そこは、今までに見たこともないくらいに、家の中いっぱいに光が差し込んでいて、
とても明るく、いったい私はどこにいるんだろうと、不思議な感覚に襲われたのでした。
なにか、空間ごと、どこか別の世界に移動してしまったような、そんな感覚でした。
それは、本当に、私にとって不思議な体験でした。
その時に、ふと私の頭の中によぎった思いが、
もしかしたら、亜由美が死んで、せーりー君が家にやってきたのは、
神々や守護者や、宇宙の根本のエネルギーとかいったものの
ひとつの計画だったのではないかということでした。
私や夫やせーりー君や、それに係わるいろんな存在に、
様々なギフトを与えてくれるために、そんな計画をたてられたのではないかと。。。
せーりー君が倒れたときは、その瞬間がそうなのかと感じただけだったのですが、
その時に感じたのは、その流れが起こる、もう何年も、そう、ずっと以前から、
その計画は進められていたのではないかと、そう強く感じたのでした。

そして、そのような計画は、何も私だけに特別に与えられたのではなく、
すべての人や、すべての生き物が、本来の私たち、それは、真我と呼ばれる状態に戻るために、
計画されて、動かされている、そしてそれが、神々の意思であり、愛なのだと、
そんな思いが、強く私の中に入ってきたのです。

本当は、これらのことは、私の胸の中にだけ閉まっておくべきことだったのかもしれません。
でも、何か、伝えなければと、そんな思いが、ずっと、強く心の中でこだましていたので、
長くなりましたが、思いきって書くことにしました。

本当に、ここまで読んでいただいた方には、とても感謝いたします。
受け入れられない部分は、私の妄想というより、ファンタジーとして捉えてもらえれば嬉しいです。
ということで、セーリー物語は、いちおうこれで終了です。
でも、また何か思い至ったら、書くことがあるかもしれません。(^^)

 

 

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