猫は毛皮を着替えて帰ってくる 第2話

 

このブログには、もしかしたら一度も紹介していなかったかもしれませんが、
7年前にせーりー君が他界したその1年後、
そのときは、まだ乳飲み子の男の子を拾って育てていました。

 

現在の先住ネコであるその子と出会ったその日は、
いつもの夕方の散歩を始めるときから
雨は降っていなかったものの、ずっと雷が鳴り続けていました。

雷が鳴り続ける中を2時間ほど歩いた最後の帰り道、
公営住宅の前の道を通りかかったときに、ピーピーピーと
まるで鳥がしきりに鳴いているような声が聞こえてきました。
一緒に歩いていた夫は、
「これ、子猫の鳴き声じゃないか」というので、
もう既に暗くなりかかっている中で、声が聞こえる草むらを見ると、
なにやら小さな白い物体が動いています。

鳴き声が聞こえる先は、公営住宅の柵の中だったので、
急いで敷地の中に入ると、その小さな白い物体は、
高速で私の方へと近づいてきました。

足下に来たところで、その白い物体を手で掴んですくい上げてみると、
そこには片手の平にすっぽり入るくらいの
小さなハツカネズミのような生き物が
まるで、「ああ、これで安心」と言っているかのように、
私の顔を見つめながら、私の手の平の中に、すっぽりと収まっています。

すると、その途端に、それまでは雷だけが2時間余り鳴り続けていたのが、
とうとうポツポツと雨が降り始めてきてしまいました。

なんというタイミングでしょう。

そんな状況では、やたらと人懐っこいその白い小さな生き物を
そのまま、そこに置き去りにする事も出来ず、
手に持ったままいったんは家に帰って、今度は車で動物病院に連れて行って、
簡単な検査をしてもらうことにしたのです。

最初は獣医さんの見立てでは、大きさだけを見て、
生後一週間くらいではないかと言っていました。
でも、よく観察をしてみると、既に歯が生えていたので
生後2週間から3週間くらい経っているようだと言い換えました。

爪の出し入れも、その数日後には出来るようになっていたので、
もしかしたら、大きさは生後一週間でも
既に三週間くらいは経っている子だったのかもしれません。

ただ、心配だったのは、見るからに体中にノミがいるのがわかる感じだったのに、
まだ小さ過ぎるからのみ取りの薬は付ける事はできないと言われたことでした。

仕方が無いので、そのまま家に連れて帰り、
そのとき、家で留守番をしていた先住のミラムちゃんには、
ノミが移る事が心配だったので、
新しい子猫はミラムちゃんには見せないようにして、
一番奥の、普段は人がいない衣装部屋で、その子を保護する事にしました。

しかし、ミラムちゃんは、何かがいる事は匂いでハッキリとわかっていたようで、
私がコソコソと奥の衣装部屋で、その子の相手をしていると、
ドアをガジガジと開ける音を立てながら、ニャーニャーと鳴いていました。
それはまるで、「私にも見せて-、私も交ぜてー」と言っているように聞こえました。
なので、ノミが移る事だけが心配だった私は、
ミラムちゃんが近くには来られないようにして、まだ乳飲み子のその子を見せると、
ミラムちゃんは、「あら、かわいい♪」と言っているかのように、
しっぽをピンと立て、顔を少し傾けながら、片足をあげるポーズを見せたのです。
それは、ミラムちゃんがご機嫌の時にとるポーズでした。

そんな事で、晴れてミラムちゃんにも受け入れてもらえた
その乳飲み子の赤ちゃんネコは、くうちゃんと呼ぶ事にしました。

ただ、その新人のくうちゃんとミラムちゃんの関係は、
そのままずっと、良い関係だったかというと、
残念ながら、そう甘くはありませんでした。

次に続きます。

 

 

出会ったときのくうちゃんです。
いまから6年前の写真になります。